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ボストンバッグ・60th.BOSTON(60th.ボストン)についてのお話

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革製のボストンバッグを復刻しました。

 

〇ボストンバッグ・60th.BOSTON・・・・・99,000円(税込)

サイズ:W55×H30×D22cm(Hにハンドルの高さは含みません。ハンドルを立てた場合、本体からのハンドルの高さは約7.5㎝です。)

重量:約1.65㎏

カラー:ブラック、カスターニョ

 

今から遡ること10年前、WILDSWANSは、東京の老舗ファクトリーである猪瀬さん(株式会社猪瀬)と組んで1つのボストンバッグを製作しましたが、こちらが今回ご紹介させて頂く、ボストンバッグ・60th.BOSTONです。猪瀬さんはWILDSWANSが、かねてよりお付き合いをさせて頂いている皮革製品の工房です。その歴史はWILDSWANSよりも遥かに長く、加えてWILDSWANSが最も信頼を寄せる工房の1つです。また、猪瀬さんは自身の皮革製品ブランドでもある「Flathority(フラソリティ)」を展開し、現在もベテランから若手の職人さんに至るまで常に技術の向上に余念がなく、その長い年月で磨かれた技術力に対しては、ユーザーであるお客様はもちろんのこと、同じ皮革製品業界からも非常に高い評価を獲得しています。そんな猪瀬さんが2011年に創業60周年を迎えた記念に、WILDSWANSとコラボレーションして生まれたのが60th.BOSTONです。

 

メイン素材にはWILDSWANSでもお馴染みのイタリアの銘革である、ミネルバボックスを使用しています。バダラッシーカルロ社が生産するミネルバボックスは、古来より継承された伝統的な製法を現代に甦らせ、あえて時間と手間暇をかけるやり方を現在も頑なに守り続けています。こうしたバダラッシーカルロ社のこだわりから生まれたミネルバボックスは、とても経年変化の速い皮革として有名です。ミネルバボックスの皮革内部には、豊富に油分を蓄えていることから、こちらが使用している中で摩擦がかかることで、皮革表面に艶となって現れます。

 

こちらの画像では、ミネルバボックスのエイジングサンプル(ル・ボナーのMBパパスショルダー/タバコ。使用期間は約半年です。)を掲載しています。ミネルバボックスの艶については、同じタンニン鞣しの皮革に比べても、重厚感が際立つ独特の輝きがあります。ミネルバボックスは、こうしたダイナミックな変化により、今も世界中の皮革製品愛好者を唸らせています。

 

変化の度合いを確認するために使用前(左)と使用後(右)のミネルバボックス/タバコを並べてみました。半年という比較的短い期間の中で、マットな使用前の表情からオイリーな面持ちに変化して色味も2トーン程濃く変化しています。オイリーとは言っても、特にベタつきはなく、あくまでも見た目の変化となります。

 

使用時に体と接触する部分が特に変化が大きくなる部分です。使用当初は明るいお召し物と合わせた際に摩擦によって移染が生じる可能性もあるので注意が必要です。このため、お使い始めはなるべくダークトーンのお召し物と合わせることをお勧めします。

 

ミネルバボックスは、皮革表面にシボと呼ばれる凹凸があります。型押し加工ではなく、樽などを用いて革を収斂(しゅうれん)させることで生まれたナチュラルな雰囲気のシボ模様は、製品一つ一つはもちろんのこと、同じ製品のなかでも部位により個性があり、少し薄くシボが出ているところ、はっきりとした凹凸が出ているとところなど非常にユニークです。

 

このシボ加工により、皮革表面にキズが入っても目立ちにくく、仮にキズが入ったとしても、ミネルバボックスの皮革内部の豊富な油分により、比較的薄いキズであればブラシ等で革を磨く、あるいは手で揉み込むなどして、キズについてはある程度修復することができます。さらに皮革表面に一定程度の艶が現れるとこの油分の膜により、水分や汚れなどによるシミもある程度防ぐことが可能です。ミネルバボックス自体、比較的柔らかい質感ですが、肉厚で弾力性もあり非常に高い耐久性を備えています。こうした皮革の特性から見てもミネルバボックスが如何に鞄作りに適した素材であるかがわかります。

 

60th.BOSTONは、底面から半円を描くような美しいカーブにより全体のディテールを構成しています。革製のバッグでドスンとした頼もしい存在感がありますが、重量は約1.65㎏と見た目に比べて軽く仕上げています。外装にポケットは装備していませんが、こうした余計なパーツを排除することで、大きなサイズでありながらもシンプルですっきりとした存在感の高いバッグに仕上げています。昨今は、ナイロン等素材の進化もあり、60th.BOSTONのような大きさの革製ボストンは、非常に珍しい存在となりました。

 

60th.BOSTONくらいのサイズの革製バッグとなると、仕様においても非常に高い耐久性が要求されますが、一流工房の猪瀬さんが製作する60th.BOSTONは随所にこうした課題を解決するギミックが用いられています。

 

例えば、本体底のはかま部分。本体とは別に革のパーツをあしらうことでかなり重い荷物にも耐えられるように工夫しています。

 

また、本体中央にはストラップベルトと一体化した当て革をあしらうことで、強度はもとより、鞄全体の型崩れ防止にも一役買っています。

 

ハンドルにも本体と同じミネルバボックスが、用いられています。ハンドル内部には芯材を入れており、こちらをミネルバボックスで包む「丸手」仕様により、手馴染みのよいハンドルに仕上げています。

 

また、より強度を上げるためにハンドルと本体を接続するハンドル根革にも厚みのあるミネルバボックスをあしらっています。さらにハンドルと根革の間に、真鍮金具のDカンを組み合わせることで、ハンドルとバッグ本体にかかるストレスを解消しています。

 

こちらのDカンは、手前にハンドルごと下すことが可能です。ハンドルを寝かせて収納したい場合に便利な機能です。

 

60th.BOSTONのもう一つ印象的な部分としては、金具使いが挙げられます。金具はゴールドカラーの真鍮が用いられ、ボストンバッグそのものをクラシカルな雰囲気に仕立てています。

 

本体正面中央に配置した留め具は丸い輪のパーツを立たせることで、フラップが開く仕組みです。こちらのパーツは、絶対左右に回さないようお願い致します。仮に左右に回転した場合、該当パーツの破損に繋がる恐れがあります。

 

丸いパーツを立たせてフラップに穴が開いた部分をスッと抜きます。

 

反対に閉じる際は、丸いパーツを立たせた状態でフラップに穴の開いた部分を入れて、最後に丸いパーツを手前に寝かせます。

 

中央のフラップを開くとこちらもゴールドカラーのファスナーが現れます。

 

こちらはエクセラのダブルファスナーです。比較的幅の広い番手のファスナーですが、務歯を丁寧に磨き上げたエクセラファスナーは、開閉が滑らかです。

 

本体の両側側面下部には革の持ち手パーツを備えているので、ファスナーを閉じる際に片手でこちらを持ちながら、ファスナーを閉めることでスムーズな操作が可能となります。

 

ダブルファスナーを開くと大きなメイン収納部が現れます。かなりの容量が収納可能です。ボストンバッグのイメージとしては、旅に持っていくバッグというような要素が強いかもしれませんが、仕事関係の書類が多い方にはビジネスバッグとしてもおすすめしたいと思います。ちなみに内装の生地には丈夫なWILDSWANSのオリジナルコットンを用いています。

 

背胴側には、WILDSWANSのゴールドカラーの箔押しロゴが光ります。そして、こちらには、ファスナー開閉式のインナーポケットを備えています。(背胴側のインナーポケット収納部:H16×W25㎝)

 

前胴側には、2室に分かれたオープンインナーポケットを備えています。(前胴側のインナーポケットの収納部(1室分):H16×W18㎝)

 

底面には大きな芯材を仕込んでいるので、安定してものを収納できる他、使用していく過程で生じる本体底面のゆがみを軽減してくれます。また、バッグを置いた際に、直接底の革が地面に触れないように5点の底鋲を配置しています。

 

また、60th.BOSTONの特筆すべき仕様の一つとして、収納部入り口の口元のパーツが挙げられます。通常このようなボストンの形状のバッグでは「袋縫い」と呼ばれる内装をひっくり返して製作することが常ですが、60th.BOSTONではこの口元部分を製作するに当たり、「袋縫い」ではなく「貼り込み式」の製法を採用しています。「貼り込み式」は「袋縫い」とは異なり、内装をひっくり返さずに、鞄自体のパーツとは別に専用の半円のパーツを製作して、こちらを本体に当てながら縫製を施します。「袋縫い」に比べて格段に時間もコストもかかる方式です。こちらを採用することで丈夫で極端な型崩れを防ぐことが可能となります。

 

最後に60th.BOSTONのカラーについてご紹介させて頂きます。

 

まずはブラック。始めはマットな雰囲気ですが、エイジングによりギラギラと黒光りした光沢が現れます。

 

続いてカスターニョ。先ほどご紹介したタバコと比べて少し色味が明るいカスターニョですが、基本的にはタバコと似たようなエイジングが期待できます。

 

いかがでしょうか。10年の歳月を経て復刻した60th.BOSTONは、現在WILDSWANSの直営店である銀座のWILDSWANS support&galleryWILDSWANS Online Shopの2店舗で販売中です。残念ながらまだ、気軽に旅に出かけられるような世界ではありませんが、60th.BOSTONを持って、いつか楽しい旅に行きたいと思います。

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