【#0228】職人の動き 1

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※こちらは2010年1月に更新されたアーカイブ記事です。
記事内に掲載されているアイテム、及び発売予告などの記述に関しましては過去の記事となりますので現在はお取扱いを行っていなかったり、また既に完売となっているものもございますこと、予めご了承下さいませ。

 

 

WILDSWANSの作り手について、その1です。

 

 

年末の忘年会シーズン、夜中の新橋・有楽町ではお酒を飲まれた方々でゴッタ返します。

 

ホームから電車に乗れば、殆どの人がいい感じにホロ酔い加減か泥酔・酩酊状態の上に、ギュウギュウに満員です。(電車に乗り込む私もまた千鳥足の一人です。)

 

車内で誰かが「ウッ、ウエエ・・」と呻けば、それまで満員で身動きが取れなかった筈なのに、何故か声を発した人を中心に半径1メートルの無人の空間がポッカリと出来ます。そんな隙間が今までどこにあったのか、いつも不思議に思う光景の1つです。

 

静寂と悲鳴が交わるそんな中電車は進んでいたのですが、その人は突然、且つ静かに車内の中吊り広告を1枚ピっと外し、クルクルと丸めて(ソフトクリームのコーンのところにある包み紙の様な)円錐形を作りました。

 

円錐の先端部分数センチを少し折り返すと、今度は反対側の開口部分に手を添えて、先程食べたであろう食べ物・飲み物を胃から円錐の中へ出されました。その行為が終わると円錐形の口部分を綺麗に折り畳みスーツの内側に仕舞い込み、何事も無かった様に次の駅でスっと降りていきました。

 

その一連の動き・所作には一切の無駄が無く、大変完成された動きでしたのでホームに降り立つその方の背中に向かって、「せめてお名前を・・!」と声を掛けたくなる程鮮やかな動きでした。

 

その方が車内で戻されたことに殆どの人が気付かなかったので円形に無人の空間が出来ることもなく、スマートにその場を立ち去る様から察するに、車内で戻し慣れてらっしゃる印象を受けました。

 

この「戻し慣れた乗客」の話を数人の知人に興奮気味に話すと、決まって「お前も酔っぱらってたんだろ? 幻覚だよ、幻覚。ところでさー・・・」と全く相手にされず、涙で枕を濡らした夜もありました。

 

何故このような話をするのかと申しますと、職人の動きには無駄が無く、尚且つ美しいというと思える事が度々あるからです。

 

長い年月の後に無駄が省かれ必要な動きしか残らないので、その動き自体が「芸」とか「舞い」のようになります。料理人、大工、鍛治工などの職人に限らず、1つのことを長く続けている人は必ずこのような無駄を省いた動きになっていきます。

 

日常的に「無駄な動きが満載」の私は、人よりも多く時間を使い、人よりも多くのエネルギーを費やしてしまいますので、そのような方々には大変憧れます。無駄に時間とエネルギーを使ってしまうと人一倍お腹が空き、必然的にエンゲル係数も高くなり、当然の帰結として己の生活も苦しくなります。

 

無駄と思える事にも何かが生まれる瞬間は確かにありますが、基本的には良い事が余り無いので必然的に「舞い」の様な動きへと変貌していく訳ですが、これは手を動かし続けた人だけが持てる特別な所作です。

 

WILDSWANSの作り手もまた日々手を動かし続けていている技術者集団ですので、何十にも渡る作業工程において研ぎ澄まされた動きをします。勿論その動きを修得するには日々の研鑽は必要不可欠であり、機械化による大量生産の時代に逆行するかのような行為でもあります。

 

 

続きます。

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